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第1回 KEC元町サロン


   「国際協力とNPO」    中田 豊一氏
   
 (報告:日産ラーニング奨学生 柴田慎士)

市民活動センター神戸では、市民活動に関わる人々の交流および話題の共有を目的として、2004年よりKEC元町サロンを開催することになりました。

 第1回目のサロンでは、2月よりラオスへJICA専門家として赴任される市民活動センター神戸の前理事長・中田豊一さんの講演および交流会が行われました。国際協力活動とは縁がなかった僕でしたが、時折ユーモアも交えたその独特の語りに引き込まれ、楽しくお話を伺うことができました。

 講演は、長年国際協力の第一線で活躍されてきた中田さんの海外での駐在経験から始まりました。最初に赴任したバングラディッシュでの経験を「とてもつらい3年半だった」と振り返ります。「NGOが問題だと考えることと住民の中の問題との違和感」「どうすれば住民のリアリティに近づけるのか」「援助は真の意味で住民に役立っているのか」など、経験不足だったという当時、様々な葛藤と不安に悩まされたそうです。

 その後、中田さんは、葛藤を解決する糸口となる出来事と出会います。それはセーブ・ザ・チルドレン・アメリカ(SCA)による栄養事業です。「現地の貧しいけれど健康な子どもがいる家庭」の母親の知恵を借り、その知恵を住民に広げてゆくというSCAの事業は、栄養不良の原因を貧しさであるとするこれまでの前提をくつがえしたものでした。この栄養事業から、「答えは問題をもっている人たちの中に既にある、援助者はそれに気づいてもらう手助けをする」ということに気がついたと言います。

 さらに、国際協力活動やそこで出会った人々との議論からその考えを深めてゆきます。そして最終的にたどりついた答えは「住民を信じること、そして住民一人一人と同じ目線に立って話をしてゆくこと」でした。中田さんの深い洞察は参加者である僕にも新たな「気づき」をもたらしたように思えます。この答えから、「援助するもの−援助されるもの」という関係を切り崩す新たな国際協力の可能性を感じました。ラオスでは森林保全の事業に取り組む中田さんが住民の方々に新たな「気づき」をもたらすことをお祈りすると共に、「気づき」の実現を確信する気持ちが湧いてきました。

 また、中田さんの問題意識は国際協力にとどまらず、講演の内容はNPO・市民活動全般にまで及びました。講演終了後は活発に質疑応答がなされ、その後、新たな旅立ちへと向かう中田さんに会場からは惜しみない拍手が送られました。そして、引き続き交流会が行われ、和やかな雰囲気で歓談がつづきました。
2004,2,1
 ■中田豊一(なかた とよかず)
 (特)シャプラニール=市民による海外協力の会バングラデッシュ駐在、(社)セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンなどを通して国際協力の分野で活躍。また、阪神大震災地元NGO救援連絡会議に参加の後、(特)市民活動センター神戸理事長として、地域の市民活動ネットワークにも関る。2004年2月よりラオスへJICA専門家として赴任中。1956年生れ。愛媛県出身。