地震と津波、そして福島第一原発の事故によって引き起こされた福島地域の被災は人類史上でも類を見ない複雑かつ深刻なものです。その複雑さゆえに、現状の評価や対応方針は組織ごとに、あるいは個々人で、まったく一律ではなく、さまざまな対応が取られ、議論が交わされてきたことは、皆さまご存知の通りです。

KECはそのような状況の中、福島への支援(現地のNPOへの支援)、兵庫に避難されている方々への支援(「避難サポートひょうご」の活動)を中心に活動してきました。

こうした状況においては、県内に留まって活動する方々を支援することは、低線量長期被曝の影響の過小評価に手を貸すものと受け止められるかもしれません。さらには、帰還を目指している方たちを支援すれば、被ばく地への定住を推奨しているとも取られかねません。逆に、県外避難した方々への支援に関わることは、その判断を支持しているとも受け取れるでしょう。

どちらかに徹すれば、態度がはっきりしていて分かりやすいかもしれませんが、しかし、現地の人々は、どちらにも徹しきれないジレンマの中で日々を生きて行かざるを得ないのが現実であり、私たちの知人友人たちの多くもまたそうなのです。

KECとしては、今回の寄付・助成プログラムを組み立てるに当たり、次のような姿勢で活動に臨む団体やグループを支援していくこととしました。

自分たちの立場や考え方を明確にすると同時に、それを他者に押し付けず、開かれた議論の場を持てるよう努力すること。情報公開をしっかり行い、組織運営もまた開かれたものにしていこうとすること。個々人を大切にするとともに、自分たちの活動とそこからの学びを広く社会に発信し、よりよい社会を実現しようとすること。

KECは創設以来、このような姿勢のNPOや市民グループをサポートしてきましたし、福島への支援についても、同じ考え方で臨んできました。今回の寄付・助成プログラムにおいても、変わりはないということです。

現在の福島地域の安全性についても、それぞれの団体あるいは関係者個々人がそれぞれ違った見方や基準をお持ちですが、KECとしては、それらを最大限尊重しながらも、私たちとのやり取りを通して、それらが、より適切で自他に対して説得力を持つものとなるよう支援していくしかないと考えています。

以上がKECの基本的な考え方ですが、これ以上踏み込んでいけば、KEC事務局や役員の内部においても必ずしも一枚岩ではなくなることも、申し上げておかなくてはなりません。こうした議論ややり取りが、福島の皆さまのためになるものであれば、KECとしては喜んで引き受ける所存です。心のこもったご支援と合わせて、忌憚のないご意見をお待ちするものです。