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オークション終了後の出来事

ティファニーブルー5711(ロット1T)がハンマーにかけられた14分間、ルー氏はその存在をアピールしていた。この日、彼は朝から遅れてしまい、入札開始直前に会場に入った。そのため、電話入札を担当する専門家のそばに立ったまま、次々と高値を更新するビッドの声を盛んに叫ぶことになったのだ。

Jay-Zは時計にまつわる話題に事欠かない人物だ。数年前のディディの誕生日パーティーでは220万ドル(約2億5000万ドル)のパテック・フィリップを身につけていたし、また、製作に3,000時間を要したとされるリシャール・ミルも所有している。2019年に彼がパーティーの"招待状"として送った超レアなロレックス「デイトナ」のことも忘れてはいけない。

このような歴史を踏まえても、12月14日(現地時間)、プロデューサーを務めたNetflix映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野』の上映会に出席したJay-Zの腕に着けられていた時計は、次元が違うとしか言いようがなかった。それは、地球上で今、最もホットな時計だと言える、ティファニーとパテック・フィリップがコラボレーションした「ノーチラス」だったのだ。

やがて、入札額が500万ドルを超えたところでルー氏は脱落した。もうだめだと思い、再びオークションの続きを見る前に、タバコを吸いに外に出た。会場の外で、ルー氏はティファニーの将来を担う人物に出会った。プロダクト&コミュニケーション担当の新副社長であるアレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)氏だ。彼から個人的にお礼を言われたのだ。この出会いは、幸運を呼んだ。

ジュネーブのパテック フィリップ サロンの長年の顧客であるルー氏は、パテック フィリップのCEOティエリー・スターン氏に直接連絡を取り、残り169本のうちの1本を譲ってもらえないかと尋ねた。この時計は発表された瞬間から熱望されており、そのうちの2本はジェイ-Zとレブロン・ジェームズがそれぞれ着用していたものだ。

「ティエリーと話して、一生懸命入札したのだから"割り当てがあってもいいんじゃないかな”と聞いたんです」 とルー氏は言った。「でも彼は、"いや、これは本当にティファニーが決めることなんです。私たちは何も言えません”と言うんです。だから、ちょっとがっかりしました」

このとき、ルー氏はもう一回チャンスがくることを知らなかった。

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