福島移動ph

 

概要

東日本大震災以降、原発事故の影響により、放射線量の高い地域では子どもたちの外遊びを禁止せざるを得ない状況が続いていました。福島の親子が抱える心身の負担を少しでも軽減させるお手伝いがしたいとの思いから、私たちは、郡山市を拠点に「移動保育」(線量の高い地域から低い地域へ移動して保育を行う活動)を実施してきました。日帰り遠足のようなスタイルで県内外の公園や施設に出かけ、そこで自然体験などの活動を行っています。外で元気に走り回る子どもたちはもちろん、お母さんたちの表情にも笑顔が戻りつつあり、この活動の成果を実感しています。そこで、従来の活動を持続的に発展させると共に、当会が蓄積したノウハウを伝えることで、福島県内外の他地域でも、その地域の方々が同様の活動を自ら運営できるようにすることを目指します。

 

活動時期

2014年4月1日〜2015年3月31日

 

寄付募集金額

1,900,000円

 

なんのために?

東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故の発生以降、福島県では小さな子どもたちを抱える世代を中心に、健康不安を理由に県外へ避難あるいは移住をし、生産年齢人口と将来を担う年少人口が一時的に減少しました。ただし、実際に移住をされた方よりも、生活基盤である職(仕事)や住居(住宅ローン)や家庭事情により、健康不安を抱えつつも福島県に暮らしていくと決断された方(子育て世代中心)が多いのが現実です。

そのような中、県内最大の都市である郡山市は、放射線量が高く、保育園や幼稚園では外遊びを自粛しています。本来の子どもたちらしい遊び(かけっこ、虫取り、花摘み、泥遊びなど)を制限しながらの保育を強いられており、成長著しい未就学児(0歳~6歳まで)の体力や知力、精神力の低下やストレスの影響が大いに懸念されています。

その一方、さらに視野を広げると、福島県に限らず全国的に核家族化や共働き世帯の増加に伴って「子どもたちらしい遊び」「自然豊かな場所での体験学習」の機会が激減しており、多くの地域で課題視されている現状もあります。

 

なにをする?

子どもたちの心身の成長と健康増進、ならびにその保護者の心理的安心感を提供することを目的に、子どもたちを放射線量の低い地域へ移動して保育する「移動保育」を実施しています。

加えて最近は、移動先である自然豊かな場所で行う自然体験や地域との交流体験は子どもたちへ大きな成長の機会を与えることに着目し「子どもたちが体験を通して自分や他人の良さに気付き成長する」ことも目的としています。

 

さらにこの活動は、福島県内はもちろんのこと、他地域でも優位性のある活動だということがわかってきましたし、実際に活動実施の要請が当会には多く寄せられています。しかし、当会では、そうしたニーズに対して当会が活動規模や組織規模を拡大して応えるのではなく、蓄積したノウハウを公開し、福島県内外の他地域でも、その地域の方々が同様の活動を自ら運営できるようにすることを目指します。そのために、普及展開をサポートできる人材を当会で育成して、他地域の方々が自ら運営する新しい形の保育サービスの仕組みづくりの一助を担う計画です。ひいてはそれが、当会の組織強化と持続性の確保にもつながるものと確信しています。

 

活動内容

主に就学前の子どもたちが、自然散策やスポーツ体験、水遊び、雪遊びなどを通して新しい発見をしたり、初めて会う友だちと集団活動を経験したりと、普段では出来ない体験を通してお子様の成長のお手伝いをします。

また上記活動を通してノウハウを蓄積し、それを他地域の方たちが自分たちで担っていけるようサポートすると同時に、そのために必要な内部人材の育成も進めます。サポート人材には、日々の現場での活動を通してノウハウを学んでもらうと共に、「活動全体のマネジメント研修」「リスク管理対策」「現地スタッフ育成」「資金繰り」など事業全体の管理に関する研修を行い、他地域からの依頼に個別迅速に対応できる体制を構築します。

 

寄付金額のイメージ

1,000円:活動時、加入するレクリエーション保険1回分

7,000円:子どもの引率、保育するスタッフのプレイリーダー費(1人分)

30,000円:子どもの送迎マイクロバス(29人乗り)1回分

 

他地域サポート人材人件費 800円×8時間×20日 128,000 12ヶ月 1,536,000

サポート人材研修費 15,000×2回/月 30,000 12ヶ月 360,000

 

今後のビジョン

活動の実施で実績をつくり、各メディアやインターネットで発信することで、活動の周知を図ります。同時に、国内・国外への情報発信を整備強化し、支援団体や企業・個人からの支援を恒常的に得ることができる体制構築を図ります。

 

また、活動を通して得られたノウハウを公開し、他地域でも同様の活動を地域住民自らが運営できる体制づくりをサポートします。その際は外部からの支援に頼るばかりでなく、自立して継続運営できるしくみ化を図ります。

 

団体として大切にしていること

団体開設当初と変わらずに、現在もなお毎週末の“移動保育”を継続実施し、未就学児、そしてその保護者のストレス解消、不安の軽減に取り組んで励んでいます。また、日頃の活動について丁寧かつ迅速に広報し、理解と協力を求めるとともに、子育て環境の向上を図る努力を常に行っています。幅広い情報発信方法を取り入れ、フェイスブックにおいては、いいね!数も3,790(1,500〜2,000ビュー/日)、ホームページにおいては、ユニークアクセスも1日に300を超える日もあり、活動の周知を日々図っています。

 

担当者メッセージ

現在、福島県に住んでいる推計人口は194万4,800人です(平成26年2月時点)。国内外から「なぜ避難しないのか?」との意見が寄せられます。原発周辺地域では補償があるため、全員が避難している状況ですが、原発から50km離れた都市では、避難している人々はごく一部であり、実際には避難したくてもできない状況にあるのが現実です。今の仕事を捨てて新しいところで収入を得ていけるかどうか自信がない、住宅ローンを抱えたままで家を捨てることができない、避難して生活する潤沢な財産がない、などの問題を抱えているからです。

確かに、放射線が人体に与える影響については、政府機関や医療関係者、専門家により、「安全」であり「人体に与える影響は少ない」との見解が出てはいます。しかし、小さな子どもたちに対する健康に及ぼす影響については、不安を拭えずに生活している人は少なくありません。老人や大人に比べ、小さな子どもたちは代謝が良くこれから体が発達していく過程であるため、子どもたちに対する放射線の影響を心配する声は多いのです。

 

東日本大震災以降、原発事故の影響により、放射線量の高い地域では子どもたちの外遊びを禁止せざるを得ない状況が続いていました。室内に閉じ込められた子どもたちには、運動不足に伴う食欲不振や情緒不安定などの問題があらわれ、一方、お母さんたちには先行きの見えない不安感とストレスが大きくのしかかっていました。そうした親子が抱える心身の負担を少しでも軽減させるお手伝いがしたいとの思いから、私たちは移動保育「ポッケア」の活動をスタートさせました。

 

「移動保育」というのは、その名の通り、線量の高い地域から低い地域へ移動して保育を行うことです。日帰り遠足のようなスタイルで県内外の公園や施設に出かけ、そこで自然体験など、子どもたちの五感を刺激するような活動を行っています。外で元気に走り回る子どもたちはもちろん、お母さんたちの表情にも笑顔が戻りつつあり、この活動の成果を実感しています。

 

私たちは、2011年より外遊びを制限されがちな福島の子どもたちに、おもいきり遊べる場を提供してきました。2013年12月までに、実施総回数150回、1,500人以上の方にご利用いただきました。たくさんの方よりご寄附の他、震災復興支援の助成金なども受けていますが、本当の意味での復興を進めるためには、そうしたお金は事業の基盤づくりのための資金として捉え、継続して事業を運営していくことが重要だと思っています。今後は関心を持つ方たちへの情報発信にも力を入れていきたいと考えています。

 

想像してみてください。子どもたちが外で走り回れない街。子どもたちが家の中で毎日過ごさなければならない日常。そういった毎日を過ごして、子どもたちはしっかりと成長していけるのでしょうか? 走り回るから心肺機能が成長し、骨や筋肉が発達する。自然に触れてきれいな花をみる、虫が飛んでいるのを目にする。地面に寝転がり、雲の流れを見つめる。そうすることで好奇心が育ち、心と脳が発達する。周りの子どもたちと一緒に遊ぶことで、対人能力が育まれる。私たちは、そうした当然のことを当然のように見て聞いて学んできました。でも福島の子どもたちはそうではないのです。子どもたちが自然の中で走り回れる、当たり前の環境を創り、子どもたちの笑顔を、発育を守っていきたい。一人ひとりにできることで、ともに見守っていきませんか?

 

ところで、「多くの制限の中で生活せざるを得ない子どもたち」というのは、福島に限らず、実は全国にいるのではないでしょうか。核家族化や共働きの増加で、子どもたちは自宅と保育施設の往復の毎日。自然と触れ合う機会や人的交流の機会が非常に少ないと感じたことはないでしょうか。そのような状況下にある子どもたちに、少しでも自然体験や交流体験の機会を提供したく、当団体が培った保育のノウハウを全国に公開して地域住民自らの力で運営できる体制づくりにも力を注ぎたいと考えています。

 

原発事故をきっかけに福島で始まった当団体の活動は、全国のみなさまのご支援で多くの子どもたちをサポートできるようになりました。引き続き当活動の基盤をより強固にすると同時に、これからは支援して下さった全国の方々への恩返しの意味も込めて、他地域での保育活動の仕組みづくりに寄与していきたいと強く考えております。

(担当:上國料竜太さん)

 

団体基礎情報

 

団体名 特定非営利活動法人移動保育プロジェクト
住所 〒963-8851福島県郡山市開成5-18-23 石井ビル201
電話 024-925-0245
団体ホームページ idouhoiku.com/