福島児童ph

福島の児童養護施設の子どもたちの健康を見守ろう

 

概要

 

様々な事情で親による養育を受けられない子どもが入所する施設を、「児童養護施設」と言います。福島県内では、0歳から18歳までの子ども達が約450名おり、毎年25~30名の子どもが18歳を迎え卒園となります。卒園後は、経済面も含めて自立して生活していかなくてはならず、福島県内だけではなく首都圏などで就職します。

福島の第一原発事故により、長期にわたる低線量被ばくに関する問題が心配されておりますが、福島県内の児童養護施設の子ども達も同様です。卒園後は一般的な健康診断のほかに、被ばくによるリスクを踏まえた定期健康診断やこれらのデータを自分で管理してゆくことが必要となります。チェルノブイリでは、原発事故後に若者世代の甲状腺がんが増加したことから、福島県でも2012年より甲状腺エコー検査が行われています。また2011年3月以降に児童養護施設の卒園生については、5年に1回の検査が計画され、生涯継続する事となっています。しかし、そのためには、自ら予約をとって受診し、検査を受けねばならず、経済的にも時間的にも厳しい状態にある卒園生にとっては、どれほど実効性や継続性があるのか疑問視されています。

児童養護施設に入所している子どもたちの中には、発達障がいなどをもつ子どももいます。これらの子ども達は、見知らぬ環境に適応しにくい、検査中はじっとしていられないなど、病院で検査を受けることが困難です。そこで私たちは児童養護施設に医師や臨床検査技師を招き、普段の見慣れた環境の中で検査を受ける事業を実施してきました。今回、これまでの私たちの事業の対象者を拡大し、卒園生が検査を児童養護施設に受けに来るための‘交通費補助’を開始しました。卒園生にとっては、自分の育った施設に帰り、親代わりの先生方と懐かしいひと時を過ごすことにもなります。甲状腺の病気の早期発見のためですが、このような検査を通して自らの健康意識を高めるだけでなく、卒園後の社会適応を促したり、精神面のサポートを受ける機会になるなど、テストケースを通じて様々な波及効果のある事を確認しています。一人一人の卒園生に、皆様方のご支援がしっかりと届く活動です。

 

 

 

活動時期

2014年9月1日〜2016年3月31日

 

寄付募集金額

700,000円

 

なんのために?

児童養護施設は、第二次世界大戦後に孤児の収容施設として設立されましたが、近年では入所者の半数以上が被虐待児で占められています。児童養護施設の子どもたちは、原発事故による被害についても保護者の代弁・保護が得られず、転居・移転などにも県の許可が必要で、自主避難も容易ではありません。東日本大震災から約半年経過した2011年8月、福島市にある児童養護施設青葉学園に訪問した東京都内の看護系大学の一教員が、施設の窮状を知り、被ばくによる影響を受けている子どもと職員の支援を開始しました。2012年4月には職を辞して福島市内に居を移し、「福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会」を設立し、福島県よりNPO法人の認可を受け施設職員・地域および専門職の方々と一体となって支援を展開しています。

児童養護施設では、職員が子どもと共に生活し、心に傷を持った子どもを癒やし、育ちを支えるために、献身的な働きをしています。孤児を基準として定められた職員数では、治療的関わりも必要とする被虐待児の増加には対応できず、常時マンパワーが不足している状態に加え、専門外である医学や被ばく防護に関する対策を行う事も難しい状態でした。  児童養護施設の子どもたちの住民票は入所前の居住地となっています。そのため、県民健康調査の甲状腺エコー検査や、市で実施する個人線量測定等の案内が入所している施設に届かず検査を受けられないことがありました。そこで私たちは児童養護施設の子どものために超音波診断装置を購入して検査を実施してきました。現在は、施設の子どもは住民票が施設になくても学校で一斉に検査を受けられるようになりました。

別の問題はまだ残っています。甲状腺がんのリスクの一つとして、のう胞の数、大きさなどの詳細が、今後の診断・治療の重要な目安となります。しかし、県が行う検査結果では、継続的な受診や再検査の必要性などは分かるようになっているものの、これらの詳細が本人に知らされることはありません。そのため、のう胞があるなどのリスクの高いと考えられる子どもたちには独自で再検査を実施しています。

チェルノブイリ原発事故の教訓から、甲状腺がんの発症率は思春期から若年成人期になると高まる事がわかっています。この年齢の卒園生が、詳細な結果を知ることができる検査を受け、その記録を自分で管理していくことが必要となります。

児童養護施設の子どもたちの中には母子手帳のない子どもがいます。そこで私たちは、生まれてから卒園するまでの健康状態を記録し、甲状腺エコー検査の結果なども合わせて1冊の「健康手帳」にまとめて、卒園する子どもに渡す事業も行っています。卒園後、せっかく検査を受けても、それを記録保管し、自らの健康管理に役立てていかなくては無意味になってしまいます。このような健康手帳とセットとなった教育的・心理的支援が必要です。

 

なにをする?

児童養護施設の卒園生を対象として、施設まで検査を受けに来る交通費等の費用を支援し、自分が育った児童養護施設において甲状腺エコー検査を受けられるようにいたします。親の保護の受けられない卒園生にとって、懐かしい施設の先生や職員方々との再会は、検査を受ける大きな動機づけになるだけなく、癒しと励みになります。また、ただ検査を受けるだけでなく、データを健康手帳に記録しつつ日常生活を振り返ることで、自らの身体を大切にし、健康に生きる意味を共に考える機会につながります。発達障がいをもつ卒園生の中には、その人の特徴に合わせた検査方法、データの管理方法を共に考えることが必要です。卒園生をよく知る児童養護施設で検査を継続的に受けることで、通常の医療機関では為し得ない、きめ細やかな支援を行う事ができます。

本年度と来年度は、入園児童でのう胞などの異常が指摘されている子どもと検査対象になっていない若い職員、そして卒園生を対象とした甲状腺エコー検査を年4回ほど実施する計画です。

 

 

寄付金額のイメージ

25,000円 卒園生は職を求めて首都圏に在住している人もいます。東京近郊から土日に福島県内の児童養護施設で実施している検査を受けるために、往復する交通費(新幹線利用)です。ご支援がなければ自己負担となります。若者世代の失業率の高さ、長時間労働など雇用状況が非常に厳しい事がニュースにもなっています。卒園生も同様の状況にあり、検査のためにわざわざ休暇を取ることは容易ではありません。

300,000円 甲状腺エコー機の保守点検費一回分(最低でも一年に一回は必要です)

甲状腺エコー検査のために、超音波診断装置Viamo(東芝メディカルシステムズ(株))は、精密な医療用機械であり、検査精度を維持するために年間保守点検を受ける必要があります。

 

今後のビジョン

現在の活動に加えて、今後は、以下のようなことを目指して活動していくつもりです。

・児童養護施設の子ども・卒園生と職員の被ばくによる健康被害の予防と、生涯にわたり健康管理できる仕組みを構築する

・卒園しても予防、異常の早期発見、健康づくりに対する動機づけ、意欲を高められる仕組みを構築する

・児童養護施設の子どもと職員が低線量被ばくとつきあう知恵と行動を身につける

 

団体として大切にしていること

子どもは親の温かい愛情と豊かな大地に育まれ、初めて自分を確かな存在であると認め、自分を大切に思う気持ちが生まれます。福島県の現在の状況は、児童養護施設の子どもの育ちからみると、とても厳しいと言えます。子どもが自分を大切にできるようになることを目指して、どのように小さな人でも、人として一人一人を大切にしたいと考えています。また子どもたちを育てている先生方・職員の皆様の健康を守れるよう、日々の活動に取り組んでいます。

 

担当者メッセージ

本会の活動は、公的支援が行き届きにくい児童養護施設の子ども達、卒園生を対象としています。低線量被ばくに関しては十分な科学的根拠がないからこそ、私たち一人一人が子どもたちのリスクを心配し、親がわりとなって、長期的に支援する必要があると考えています。多くの人々の様々な支援を必要とする子ども達や卒園生たちは、東日本大震災という未曾有の災害だけでなく、長期的な健康リスクを抱えていると考えています。一人でも多くの皆様にご関心を持っていただきたく思います。小さな活動ではありますが、一人一人の子ども達に確実に行き届く支援を展開しています。皆さまのご支援を心からお願する次第です。

(丸みつえさん 澤田和美さん)

 

 

団体基礎情報

団体名 特定非営利活動法人福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会
住所 〒960-8055 福島県福島市野田町6丁目4-74-5メゾンオーブC203
電話 024-573-2939
団体ホームページ www.fukujidou.org/