「NPO法人福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会」訪問記

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(以下、NPO法人福島県の児童養護施設の子どもの健康を考える会」の訪問記です。正式略称は「ICA福子」ですが、文中では「福児童」で統一します。)

8月29日(金)、「福児童」(正式略称「ICA福子」)の代表の澤田和美さんを訪ねて、中田・諏訪の2名で、活動現場である福島市内の児童養護施設を訪問しました。バス停からゴルフ場の横の坂道を上がっていくと、比較的新しい、大きな建物が見えてきて、これは何だろうか、と思ったら、訪問先の児童養護施設でした。

団体としての「福児童」の活動は、ホームページやニューズレターでかなり詳しく紹介されていますので、そちらをご参照ください。
(http://www.fukujidou.org/)

ここでは、「福児童」の活動現場である施設の概況についてご報告します。

この児童養護施設は、明治時代から活動を行ってきた歴史を持ち、バス停の名前もこの施設の名前になっているなど、地元ではよく知られた存在のようでした。福島市の中心部からはバスで1時間弱と、交通は便利とは言えない場所ですが、施設の隣はキャンプ場で、見晴らしも良く、自然に囲まれ、子どもの遊び場所には事欠かないような印象を受けました。しかし、それも原発事故が起こるまでの話です。施設の周辺は、放射線量の関係で、子どもが立ち入る場所に制限が設けられています。公的除染以外にも施設職員やボランティアによる除染が何回も行われていますが、線量は一定以下には下がりません。

学校などの公的な施設は、公的な資金で除染作業が行われますが、児童養護施設の多くは民間の組織であるため、除染にあたっても、民間の施設という扱いになり公的除染の時期も遅くなりました(発災後1年3ヶ月後)。しかし、学校に子どもがいるのは平日の昼間だけですが、児童養護施設は、入所している子どもたちにとっては住まいであって、子どもの健康への影響を考えると、本来は、少なくとも学校と同等以上の優先度で除染が行われるべき場所だと言えます。

この施設の敷地内にも、一部に放射線量の高い箇所があり、特に高い箇所については線量を下げるために遊具の交換や遊び場の地面のための工事などをせざるを得ず、その作業はいまも続いているとのことでした。例えば、駐車場から正面玄関までの枕木の階段も枕木には放射能が中まで染みこみ線量が高いという理由で取り変えてコンクリートにしていました。若い人に被曝させたくないと園長先生自身の手作業をしていました。幸い、子どもが生活する建物は鉄筋コンクリートのため、施設の内部は、比較的線量が低いとのことでしたが、それでも、こうした環境の中で日々暮らさざるを得ない子どもたちのことを考えると、子どもの被曝対策に関する制度の矛盾を感じざるを得ませんでした。

「福児童」では、こうした状況下にある児童養護施設に暮らす子どもたちの健康被害が起こらないための対策を、看護師である代表、副代表を中心に、複数の領域の専門家が協力して活動を進めています。専門家集団ですので、もともと情報発信(アドボカシー)などの面で強みのある団体でしたが、ここにきて、役員である2つの児童養護施設の園長をはじめ児童養護施設の関係者とのネットワークが県内全域に広がりました。健康手帳に子どもたちの被曝のモニタリングデータのほか、健康や病気の記録、成長発達の記録をデータ化して卒園するときに子どもが健康手帳として持て、さらに施設でも長期に保管できる子どもの健康を守る具体的な活動が、より本格化してきているようでした。

蛇足ながら、パワフルでおしゃべりな「福児童」代表の澤田さんと、静かで訥々した語りの中に力強さを感じさせる児童養護施設の園長さんの組み合わせが印象的でした。子どもの健康という課題に取り組む際には、発信力と、寄り添い力(とでも言うのでしょうか)は、両方とも必要で、その象徴的なお二人という印象を受けました。

【中田コメント】常々話しには聞いていたものの、児童養護施設というもののイメージが湧かなったが、今回は実際に訪ねることができて、さまざまな意味で、その役割の重要性と運営の困難さを痛感。本当の困難は施設を出てから始まるとも言えるので、その意味でも、継続的に健康状態をモニターし続けることのできる仕組みつくりは大きな意味がある。徐々にネットワークも広がっているようなので、粘り強く続けて行ってほしい。